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[食 Vol.32] − 豊後大野市朝地町 − / 乾しいたけ」

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− 豊後大野市朝地町 −

乾しいたけ

Vol.32
今回は、大分の代表的な特産品、「乾しいたけ」をご紹介します。
乾しいたけは、大分県では竹田市、豊後大野市などを中心に県内各地で生産されており、生産量は国内生産の1/3を超え、品質も全国乾椎茸品評会で42回の団体優勝を獲得するなど、量、質とも日本一を誇っています。

日本におけるしいたけ栽培は今から350年ほど前、豊後の国(現在の大分県津久見市)の源兵衛(げんべえ)という人が、炭焼きの残り木にしいたけが出ていたことからヒントを得て、クヌギやナラに刻み目を入れ、しいたけの胞子が着くのを待つ「鉈目式(なためしき)しいたけ栽培法」をはじめたのが最初と言われています。

全国乾椎茸品評会において農林水産大臣賞を過去10回受賞されている豊後大野市朝地町の小野九洲男(72歳)さんを訪ねました。
 
小野さんの自宅は、国指定の重要文化財「神角寺」や国内最大の「普光寺麿崖仏」に近い久住山系を背にした標高500mの山間部にあります。
小野さんは、米の減反を契機に昭和45年頃から本格的にしいたけ栽培を始めたそうです。今では、奥さん、息子さん夫婦の4人で力を合わせ、露地4万本、ハウス3千本のほだ木で栽培し、乾しいたけとして、年間1,500〜2,000kgを出荷されているそうです。

小野さんに乾しいたけづくりの極意を尋ねました。「最高品質の乾しいたけをつくるには、まず、最高品質のしいたけを栽培することが大前提。しいたけ栽培では特に天候が大切。雨の量や陽の当たり具合で収量、品質が左右される。できる限りほだ場に足を運んで成長状況を見守り、可能な限り水分の少ない状態で採取することが大切。採取後は直ちに乾燥機で乾燥して成長を抑え、型くずれや変色、シワが生じないよう、乾燥温度・時間を管理することが大切。栽培から乾燥まで愛情なくしてはできない仕事だ。」と言うベテランは手間を惜しまず、愛情を注ぎ、最高品質の乾しいたけを世に送り出しています。

乾しいたけづくりの最大の喜びは乾燥の仕上がりだそうです。最高品質の状態の乾しいたけを見るとこれまでの苦労も忘れられ、自然と顔がほころぶそうです。

「今後も愛情を込めて消費者に喜ばれる最高の乾しいたけづくりに精進したい。」と熱く語ってくれました。

<伝承料理研究家 金丸佐佑子さんの乾しいたけの話>
春子、藤子、秋子、寒子、冬、香、香信、しいたけの呼び方です。ご存じでしたか。収穫の時期や形状によって呼び方が異なるのです。
海岸部育ちの祖母や母はハレの日のみしいたけを料理していました。それだけ貴重品だったのです。栽培技術が進歩し、流通量も増加、価格も手頃になった今でも私にとって、しいたけは貴重品、ダイヤモンド並の輝きを持った食材です。こっそり一人悦に入って楽しむ宝石のダイヤモンドと違って、美味しく、健康食品のしいたけは皆で楽しめるダイヤモンド。料理し、振る舞った時の皆さんの笑顔は何にも代え難い喜びです。乾しいたけは料理するのが面倒くさい、臭いが苦手という方に金丸流簡単レシピをご紹介します。
まず、一晩低温の水に浸して戻します(夏は冷蔵庫で)。しいたけを軽く絞り水気をとり、サラダ油少々で炒めます。戻し汁を加え、加熱(時々浮いた油やアクを取る)、柔らかくなったところで、醤油やみりん、オイスターソースで調味。水分がなくなったら、出来上がりです。そのままでしいたけステーキに、スライスして生野菜と一緒にドレッシングと和えて、しいたけサラダ、にゅう麺やパスタのトッピングに、さらに刻んで混ぜご飯、散らし寿し等々。工夫すれば、まだまだ沢山の料理ができるはずです。私は一度に沢山の旨煮を作り、冷凍保存。我が家のお助け食材の一つです。どうぞお試しくださいませ。きっと目からウロコですよ。

総合監修 金丸佐佑子(平成20年12月)

■杉林内の「ほだ場」
ほだ場は、種菌が蔓延したほだ木を並べる場所。

■冬期栽培を説明する小野九洲男(おの くすお)さん
杉林内のほだ場でビニールをかけ、照度調節や温度・保湿管理を徹底することで、12月〜2月の冬期に高品質の生産を可能にしている。

■収穫する小野さんご夫婦。

■乾しいたけ
乾しいたけは、クヌギの木を11月の黄葉時期に伐採、1月〜3月にかけて90cm〜120cmに切断し、穴を開け、しいたけの種菌を植え付け、二夏経過の秋まで伐採地で寝かせ、椎茸菌を蔓延させ、その後、蔓延したほだ木を杉林内のほだ場へ移動して並べ、採取したしいたけを乾燥させる。

乾しいたけにはエリタデニンという成分が含まれています。これがコレステロールを分解する能力を持っており、高血圧、動脈硬化、高コレステロール症等の予防に優れた働きをすると言われている。

■原木どんこ寿し
朝地町が誇る乾しいたけを使用した逸品。これは、2008年日本特用林産振興会主催の「きのこ料理コンクール」で最優秀にあたる「林野庁長官賞」を受賞。
現在、里の駅「やすらぎ交差点」で販売中。


■里の駅「やすらぎ交差点」
「朝地牛定食」や「しいたけ定食」、「しいたけカレー」など、ここならではの味が楽しめる憩いの空間。地元産の新鮮野菜や加工品も販売している。
 ◇所在地豊後大野市朝地町梨小1141−1
 ◇電話0974−74−2020

■神角寺
鎌倉時代に建立された本堂と、山門の一対の仁王像は、国指定の重要文化財。4月中旬から下旬に約500本のシャクナゲが見頃。

■普光寺麿崖仏
別名「紫陽花寺」。高さ11.3mにも及ぶ国内最大の麿崖仏があり、中央の不動明王像は、セイタカ童子ねコンガラ童子を両脇に従える。

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