大分県の西部に位置する日田市は、天領であった江戸時代から杉材の生産が盛んで、古くから木材の生産地・集散地として栄えたことが、木材関連の産業を生み出す土台となっています。日田下駄や日田家具など、木製はきものや脚物家具の全国有数の産地として知られています。
今回の『職』では、そんな日田市で、木が本来持つしなやかさを損なわず、素材自体の色や質感を活かした木工芸品を製作している『ウッドクラフトかづ』代表 宮原一暢(みやはら かづまさ)さんを紹介します。
宮原さんは北九州市の出身で現在42歳。「ものづくりや絵を描くことが子供の頃から大好きでした。両親にサンダーバードのプラモデルを買ってもらって自分で作ることが最高の喜びでした(笑)。」と語ってくれました。
そんな宮原さんは、理系の大学に進学したものの目的意識をもてないまま中途退学し、とりあえず九州に帰ろうと大阪の夜行バス乗り場に向かったところ、たまたますぐに出発する大分行きの便を見付けて飛び乗ったそうです。翌朝大分市に着いた宮原さんは、その足で大分県庁に行き、受付で「木工をやりたいのですが、どこに行けばよいか教えてください。」と尋ねました。県庁で紹介された大分県日田産業工芸試験所(当時)を訪ね、さらにそこで紹介を受けた日田市内の木工品製造企業で勤務することとなり、10年間修業を積んだ後、5年前に独立しました。
現在は、『木のダイヤモンド』と呼ばれる世界で最も高級な南アフリカ産の木材『ピンクアイボリー』など、国内外のさまざまな木材を使用し、靴べら、スプーン、箸、菓子切り、名刺立て、ネックレスやイヤリング等のアクセサリーなど、幅広い商品を製作しています。
県内外のショップに販売したり、各地の百貨店で開催される物産展等にも出展しています。また、東京の『銀座・和光』への商品提案及び製作受注など、幅広く取引を行っているそうです。
ものづくりに対するこだわりを尋ねたところ、「1つは、見た目にきれいなものを作ること。2つ目は徹底して行う仕上げです。木材の角の取り方一つで、緊張感や優しさなど商品の持つ雰囲気が変わってきます。これは、商品を遠くに置いて見ても分からない部分ですが、商品を手に取った瞬間に伝わるものであり、とても大切にしています。」
「私は、緊張感のあるシャープなデザインと、木を曲げる技術を得意としています。商品製作にあたっては、まず、何を作りたいか、誰に売るのか、どのように使ってもらうのかを考え、そこからどういう形、デザインにするのかが決まり、緊張感のあるデザインにすべきか、または優しさを持つデザインにすべきかなど、徐々に設計が固まってくるのです。デザインから最後の仕上げまで、妥協のない姿勢でものづくりに取り組み、作り手の想いが伝わる商品づくりを目指しています。」
将来の目標については、「地方発のブランドを作りたいです。東京発ではなく、大分からデザインやものづくりの方向性を発信できればいいなと思います。自分にしかできない技術や製品を追求し、日本だけでなく、外国に出しても良いモノだと言われるような誇れる商品を作りたいです。」
温厚で優しい語り口の宮原さんですが、木工職人としてのプライドとものづくりに対する強いこだわりを感じることができました。
『ウッドクラフトかづ』では、平成22年2月に、ホームページを立ち上げ、全国に商品情報などを発信する予定です。その節は、宮原さんの想いが表現された商品をぜひご覧ください。
『ウッドクラフトかづ』(代表 宮原一暢)
大分県日田市大字東有田2594−15
TEL:0973−26−0439
FAX:0973−26−0440
(平成22年1月発行)
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3次元曲げという難しい曲げ木の技術を用いた靴べら
お話を伺った宮原さん(写真右側)
太刀ぞりをイメージした微妙なカーブが美しい靴べら『太刀』
箸先まで完全に八角を通している携帯箸
木目を活かしたシンプルなデザインの携帯箸ケース
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