今回は、大分県大分市で、自ら築いた穴窯で焼締陶器を制作している陶芸家、美藍(みらん)窯の河原畑伽兆(かわらばたかちょう)さんを紹介します。
河原畑さんは、「豊後信楽焼(ぶんごしがらきやき)」と称して独自の焼物を制作しています。「信楽焼」は、日本六古窯の中でも最古の窯場として1300年の歴史と伝統をもち、主に滋賀県甲賀市信楽町を中心に焼かれている伝統陶器です。河原畑さんは、その古信楽焼の伝統技術を独学で習得し、九州の土を独自にブレンド、釉薬を使わず、薪だけで5日間焼き上げ制作しています。いかに本物の作品に近づけるのか。こだわり抜いた土と薪、そして何度もの失敗のもとに生まれた穴窯を用いて、土と炎が作り出す荒々しさの中に浮かぶ美しい窯変(ようへん)の世界を確立しています。
大きな特徴の一つは無釉焼締(むゆうやきじめ)による「土味」です。焼締とは、釉薬を掛けずに高温で焼き、自然にできる偶然の模様や色合いを特徴とする焼物です。薪の炎が、直接作品に作用し、一つずつ固有の神秘的な模様を作り出します。これを自然釉や窯変と呼び、その偶発的自然美は、火色、ビードロ、こげなどと呼ばれ「侘び寂び」を感じさせます。無釉なので、使われている粘土自体の特性により焼きあがりの質感も大きく異なり、湿度、焚き方などによって微妙に色合いが変化するそうです。土の持つ味わいを活かした独特の美と感性がそこに生まれてきます。
河原畑さんは語ります。「焼いた作品の中でうまく自然釉や窯変がでるものは限られます。だから材料を吟味し、土作りから焼き上げまで、その時の自分の全勢力を込め、創意工夫を施します。時には思ってもみない良い作品が生まれます。それを偶然とよく表現しますが、本当は必然なのです。全てが自分という人間の力ではなく、人の力ではコントロールできない、予測しがたい変化を導くのは器を取り巻く気なんです。それは、炎や空気、土、水といった生き物によるもの。その全てが掛け合わさった時、器へ命が吹き込まれるんです。」私たちは自分の力で生きているとよく思いがちですが、本当はこの世界に生かされているんだということを河原畑さんの器を通して改めて考えさせられました。
人肌を感じさせる温かい火色やガラス質の青緑、黄緑を呈するビードロ、そして黒褐色の錆びた色合いのこげなど微妙な条件の変化を素直に表現する河原畑さんの作品は、これまでの自身の人生をうたっているものと言えます。30歳で陶芸家を目指し、焼き物の道に入り20余年。それまでは自分を表現する手法として音楽や料理の道で活動されてきました。そういった経験で培った音楽の「遊び心」、料理で覚えた「使いやすさ」、それに河原畑さんの人生のテーマ「勢い」、この三つを器に吹き込み内に秘めた美しさを表現していきたいと語ってくれました。
現在は、積極的に全国の百貨店やギャラリーで個展を行っています。また、自宅のギャラリーには、出会うことが必然と思わせられる心地良い作品が並べられています。そんな河原畑さんの作品を求めて全国から大分県までたくさんの方がいらっしゃいます。ぜひ、河原畑さんの命が吹き込まれた作品を手にとってみてください。
○お問い合わせ先
美藍窯 河原畑伽兆
電 話:097−588−1970
FAX:097−588−1970
住 所:〒870−1213 大分県大分市大字下原1171番地
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作品名「豊後信楽青雲大壷」
作品名「豊後信楽耳付き水指」
作品名「豊後信楽雛形花入れ」
右「豊後信楽とんぼ目徳利」左「豊後信楽とんぼ目ぐいのみ」
右「豊後信楽土瓶」左「豊後信楽ティーポット」
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