今回は、春を告げる食材、「佐伯つわぶき」をご紹介します。
佐伯つわぶきは、佐伯市内の鶴見、米水津、大入島、上浦など温暖な海岸部で栽培されています。
「つわぶき」を栽培している佐伯市鶴見の広津留宗三郎(74歳)さんを訪ねました。
広津留さんは、奥さんの勝子(69歳)さんと一緒に海が見下ろせる山の畑で、青々とした「つわぶき」を収穫していました。
以前は巻き網漁をされていた広津留さん、本格的に農業に取り組み始めたのは42歳頃からで、以来「自分にしか作れないものを」と、こだわりの栽培を続けています。「つわぶき」は20年前、冬に収入になる作物はないかと始めたそうです。
広津留さんに「つわぶき」づくりのこだわりについて尋ねました。「手間はかかるが、食べる人の健康を考え、農薬は使わず、肥料は、油かすや牛ふん、鶏ふんなど、自然なものにこだわっている」。愛情を込めて育てられた「つわぶき」は、環境に負荷を与えず、安全・安心に育てられた農作物に与えられる「e-naおおいた」の認証を受けています。
加工の工程を拝見しました。摘み取った30センチほどに伸びた若芽の皮をむき、塩水でアク止めを行い、適当な長さに切りそろえる。その一つ一つの作業をきびきびと丁寧にこなしていくお二人。暖かい方が皮の剥けが良いそうですが、一日に出荷できる量は多くても30箱(一箱約2キロ)程。茎のきれいな黄緑色を保つために、アク止めの方法も研究を重ねてきました。最盛期には、毎日夜明け前から日暮れまで作業が続くからとても大変だそうです。
広津留さんは、地元農家で「アグリの会」を結成し、安全・安心な旬の野菜づくりを広めようと、汗をかかれています。
「研究に没頭し、家にいないこともしばしば。自分一人で農作業する時は大変よ。」と笑いながら話す勝子さん。
収穫された「佐伯つわぶき」は、主にJAおおいた佐伯豊南を通じて11月から4月末頃まで県内や福岡市へ出荷されています。
<伝承料理研究家 金丸佐佑子さんのつわぶきのお話>
「つわぶき」料理の季節が近づいてきました。我が家の庭には100年を超す松や山茶花に混じって、紅白の万両、千両、南天、万年青、金柑、吉祥寺草等、庭師さんから見たら、邪道の樹木が植えられています。名称が縁起が良いとか、行事の時花や料理として便利だとか、そういう理由で増えたようです。
その一つが「つわぶき」。晩秋には石灯籠の下に可憐な花を咲かせ、その内の数本は玄関や床の間の投げ入れに使用します。
やがて春になると、食事を賑わすのです。我が家の「つわぶき」は生活の智恵として伝承されてきました。私にとってこの当たり前が、山間部の学校に勤めた時、「つわぶき」が存在しないことにびっくりしたのです。理由は簡単、海風が届かないところでは育たないとのこと。
その時の教え子、勿論、「つわぶき」とは縁のない、山間部育ち、その上フランス人形のような顔立ち、持ち物からファッションまで全てカタカナぽい彼女の得意料理がなんと「つわぶき」の料理なのです。ご主人が海育ちだった由。料理は私と同じ、佃煮や煮物、てんぷら止まりで、カタカナぽい料理は目下研究中とのこと。「つわぶき」は今まで食材としてメジャーではありませんでした。だからこそ磨きをかけると次期大スターになる可能性もあると思うのです。カタカナぽい料理も良いかもしれません。私も新しいレシピに挑戦してみようかなと思っています。
総合監修 金丸佐佑子(平成21年2月)
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佐伯市鶴見沖松浦の風景
つわぶきは、「艶葉蕗(つやばぶき)」の語源のとおり、葉が大きく表面が艶々としているキク科の多年草。黄色く可愛らしい花を咲かせる。旬は3月頃。佃煮からサラダ、天ぷらなど様々な料理方法があり、ほろ苦い味わいは、噛むほどにふるさとの懐かしさを醸し出してくれる。
広津留宗三郎(74歳)さん、勝子さん(69歳)のご夫婦
収穫風景
加工風景
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