「紙をつくり続けたい」 オノさんの思いは一つです。
川のせせらぎとセミの鳴き声が響く中、オノカヨさんの工房「和紙場 地」(わしば じ)をお邪魔しました。
大分市出身のオノさんは、京都の大学で和紙工芸を専攻し、福岡の八女伝統工芸館などで和紙に関わる仕事に就いていましたが、平成24年7月に大分県にUターン。現在、竹田市に工房を構えています。
元来、工芸が好きだったオノさんが和紙づくりを始めたきっかけは、「和紙は作品としては未完成。素材として使うことで何でも変化する可能性の大きさに魅力を感じたこと。」と話します。また、「大木を伐採した木材チップを原料とする洋紙と違い、和紙は一年で育つ低木の皮の繊維を原料とするため、地球環境の循環サイクルに合っている。」とも話してくれました。
さて、和紙づくりの工程を教わりました。
?原料である楮(こうぞ)の木の皮を煮て、表面の皮や余分な成分を取り除き、繊維だけを取り出す。
(楮…クワ科の落葉低木。繊維が長く、美しい紙をつくるのに適している。)
?繊維に残ったチリやゴミなどを丁寧に取り除き、ほぐしたあと、真水と「ネリ」を混ぜ合わせると和紙の元ができる。
(ネリ…紙原料液の粘度調整をするもので、トロロアオイの根っこを使う。)
?この液体を簀桁と簀を使って、紙の厚みを一定に揃え、漉き舟の中で紙を漉き、絞った紙を乾燥させて完成。
和紙づくりの風景を見せていただきたかったのですが、夏場や梅雨時期は、ネリの粘りが効かず和紙づくりには適さないとのことでした。自然には逆らえません。
今の季節は、主に、出来上がった和紙を照明やタペストリー、カバン、財布など様々な作品に加工する作業をしています。縫製からパッケージの作成まで、全てオノさんの手作業です。どの作品も、しっかりした強度、紙製品の特性である軽さ、そして、オノさんが丁寧に染めた1点1点異なる美しい発色がとても魅力的でした。
最後に今後の活動について尋ねると、紙漉き職人の減少や原料の仕入れ先農家の廃業などを懸念しながらも、「紙をつくり続けたい。」と力強い返事が返ってきました。
オノさんの、技術の継承に対する情熱や使命感、和紙に対する思いは人一倍です。これからもとことん和紙づくりにこだわり、活躍の場を広げていくことでしょう。
畑ではトロロアオイがすくすくと育っていました。
【お問い合わせ先】
オノカヨ
〒870-1215 大分市大字上詰1260-1
電話 097-589-2858
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竹田の豊かな自然に囲まれた工房「和紙場 地」
オノさん
漉き舟
トロロアオイ
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