九重町(ここのえまち)
〜肉厚のステーキ用生しいたけ〜 |
Vol.36 |
本県の乾しいたけは、平成21年度の全国乾椎茸品評会で11年連続・43回目の団体優勝を飾るなど質・量とも全国一を誇り、生産量は全国の約38%程を占める産地ですが、生しいたけの生産も盛んです。近年、高品質でボリウム感のある生しいたけが生産されています。
しいたけ栽培には、原木栽培と菌床栽培がありますが、原木栽培は、クヌギなどを1.2m程の長さに切り、穴を空けて菌を植え付けたホダ木を1年半程、山林などの自然環境の中で菌を繁殖させ、きのこを発生させる方法です。
一方、菌床栽培は、クヌギのおが等のチップに米ぬかなどを混ぜて作ったブロックを5ヶ月程、施設の中で温度や湿度に気を配りながらシイタケ菌を繁殖させて栽培する方法です。今回は、九重町(ここのえまち)で菌床栽培に取り組む坂本庸一郎(さかもとよういちろう)さんに話を聞きしました。
庸一郎さんが住む九重町は、大分県の南西部に位置し、標高800m〜1,800m程の九州の屋根と呼ばれるくじゅう山系から湧き出る清らかな水と豊かな自然に恵まれ「しいたけ生産」が盛んです。平成18年には、日本一の人道大吊橋「九重“夢”大吊橋」(長さ390m、高さ173m)が完成し、県内外から多くの観光客が訪れています。
父親の憲治(けんじ)さん((有)やまなみきのこ産業 代表者)が取り組んでいた菌床栽培に、高校の頃から興味を持っていた庸一郎さんは、大学を卒業した平成8年に東京から戻り、憲治さんの指導を仰ぎながら、後継者の道を歩みはじめました。その後家族も増え、栽培や研究に一層力が入っています。
県内菌床栽培の先駆者である憲治さんの下には、菌床栽培に興味を持った研修生が多く集まっていたこともあり、庸一郎さんは菌床しいたけの品質の均一化や作業効率を高めるため、研修生などの仲間5人で、農事組合法人「万葉しいたけ」を平成19年に設立し、菌床栽培のさらなる進化に取り組んでいます。
菌床栽培は、しいたけを発育させる菌床ブロックづくりをはじめ、施設内を自然環境に近い状態とする温度や湿度の管理が重要なため、施設外の環境状況と施設内の生育状況に応じて常に適温・適湿な状態に保つのに苦労しているが、反面、毎日のように栽培方法などに新しい発見があるとの事でした。
菌床栽培では、得てして量産タイプで作りやすい品種に走りがちになるようですが、庸一郎さんは人と同じ事をしていてはダメとの信念から、作るのが難しい肉厚でボリウム感のある品種に取り組み、現在では「ステーキ用生したけ」として東京の高級スーパーでも取り扱われています。
「今後も、日々研究を重ねながら良質な生しいたけの生産とともに、出荷の際に切り取るあしの部分の加工品にチャレンジしたい。」と語ってくれました。
坐来大分では、8月17日からのメニューに庸一郎さんの「生しいたけ」を使用したお料理「九重焼き椎茸カボス卸し」をご用意していますので、ご来店をお待ちしています。
〈伝承料理研究家 金丸佐佑子さんのお話〉
先日のこと。「チョーうまい。」「まろやか。」「ジューシー。」「甘い。」隣の部屋のテレビから聞こえてきた言葉です。何の食材かしらと覗きましたら野菜の「ピーマン」でした。「ピーマン」でなく他の野菜でも、肉でも、魚でも、いろいろな料理でも、この言葉で間に合います。
若いタレントさんの語い不足と嘆きつつ、その時、ふと思ったのです。私のことを他人様に伝えてもらうとすれば、どんな表現になるのかしらと。常套後ではなく、私の良いところも悪いところも本当のことを伝えてもらいたい。悪いところばかりで胸が痛むかもしれない。でも、それが真実なら仕方がないと。
そして更に思ったのです。しいたけはどんな風に伝えてもらいたいと思うかしらと。
?美味しい。その理由は旨味成分グアニル酸にある。
?健康食品である。ビタミンDのもととなるエルゴステ
リンを含み、骨の発達や骨粗しょう症予防に役立つ。
?新陳代謝を活発にする。アミノ酸の一種であるエリタ
デニンを含む食物繊維が多い。
?免疫機能を活性化。しいたけの食物繊維は不消化性多
糖体。等々。
今後、医療的にも栄養学的にも期待される食品の1つなのです。
難しいことはさておいて、低カロリー。食物繊維が多い。無農薬、無肥料で安心・安全そして何より美味しい。しいたけ大好き人間の一人として、生産量日本一の大分県民の一人として、しいたけの素晴らしさを伝えたい。伝えることが出来たでしょうか。私もやっぱり語い不足ですね。
総合監修
生活工房゛とうがらし˝金丸佐佑子(平成21年8月)
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5ヶ月の栽培期間を経た生しいたけ
九重町の山間部にある「万葉しいたけ」菌床栽培施設
しいたけを発育させる菌床ブロック
「やまなみ生しいたけ」ブランドとして出荷
坐来大分メニュー「九重焼き椎茸カボス卸し」
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