豊後大野市緒方町(おがたまち)
茄子(なす) |
Vol.48 |
豊後大野市緒方町は、宮崎県との県境にあり九州の屋根である「祖母・傾山系」、日本の滝百選に選定されている「原尻の滝」などがある風光明媚な地域であり、緒方五千石と呼ばれる米どころでもあります。
今回は、そうした豊かな自然の中で、微生物農法により茄子、タマネギ、トマトなどの栽培に取り組む 西 文正(にし ぶんせい)さんを訪ねて来ました。
西 さんに微生物農法の特徴を伺うと「微生物のエサが多く残っている堆肥を畑の地表に撒き浅く耕し、三週間から一ヶ月かけて菌をじっくりと殖やす(土ごと発酵)ことで、作物に有害な病原菌の繁殖を抑え、安全で栄養価の高い美味しい農作物ができ、環境にも優しい農法。」と教えていただきました。
この農法で作った茄子を生で食べさせていただきましたが、本当に甘く青リンゴ風味なのにとても驚きました。
そもそも茄子は、アジアを中心に世界の各地で栽培され、ヨーロッパやアメリカ等では白、黄緑色、縞模様があるなど多種多様です。
日本では7〜8世紀頃から千年以上に渡り栽培されているため、各地に固有の品種が生まれ、全国で100種類以上の茄子が栽培されています。
西 さんが栽培している茄子の品種は中長茄子の「大成」で、6月中旬から11月中旬にかけて年間約20トンを出荷しています。
「大成」茄子の特徴は 皮が薄く甘くて柔らかいそうです。美味しい食べ方は、皮をむかずそのままオーブンで皮が膨れるまで焼き、2〜3分間おいて、カボス、醤油をかけて食べるのが美味しいそうです。
また、美味しい茄子の見分け方については、黒っぽく、光沢があり、ヘタがしっかりしているものを選ぶよう教えていただきました。
西 さんは「農業は大変だが、自由がありしたいことができる。」と優しい笑顔で言われたように、農業での探求心が旺盛で独自の微生物農法を手探りで確立し普及させるなど、地域のリーダーとして農業を盛り立てています。
西 さんが真心込めて栽培した茄子を、是非坐来大分でご堪能ください。
〈伝承料理研究家 金丸佐佑子さんのお話〉
「茄子のアチャラ」私の定番料理です。茄子と茗荷をアチャラ酢(唐辛子入りの甘酢)に漬けただけですから、自慢する程の料理ではありませんが、この季節には欠かすことの出来ない料理でもあります。その理由は美味しさ以上に食卓が賑わうからです。
アチャラの名前の由来から始まって、大分県下にあるアチャラの種類や材料について等。
アチャラの語源はポルトガル語らしいとか、いやはやラテン語だよとか。語学の専門家がいるでなし文献を調べようとする人もいず、毎回飽きもせずこの議論を繰り返しています。語源等どうでもよい。むしろ謎めいている方が楽しい。とはいいつつもこれはやっぱり不勉強の言い訳ですね。
私のまわりで使用されるアチャラの食材には新ごぼう、れんこん、白芋、木耳、蕪、こんにゃく、干し大根等があります。これらに共通していることは食材の木目が粗いということです。アチャラ酢が浸みやすいからでしょう。つるりとしたこんにゃくは、わざわざ一度凍結して凍みこんにゃくにしてから使用します。そしてもう一つ共通点がその食材と同じ旬の薬味を使用するということです。茄子と茗荷、蕪と柚等は相性抜群。旬同志の組み合わせにまずいものはありません。
茄子は食材として多様に使えます。生食、焼く、煮る、炒める、揚げる等どんな調理法でも。和、洋、中華等、どんな国の料理にでも主役がはれます。
茄子沢山のミートソースを作り、おしぼちょ(※)と重ねてオーブンで焼く、これは私が若い人に振る舞う得意料理の一つですが主役の茄子をさておいて、おしぼちょに話題が集中します。でも茄子は一向に嫉妬しません。茄子の存在はおしぼちょの比ではないからです。
大昔のことですが、着道楽の叔母が茄子紺の縦縞の着物を着ていることがありました。沢山あった着物の中で、何故その茄子紺の柄が思い出されるのか、自己主張している割に控え目。茄子料理をする時、妙に思い出されるのです。茄子の料理にも共通しているように思えます。
茄子の本望はもう少し華やかに、今風に認めてもらいたいかもしれません。大分の茄子を大分らしい品格のある料理に格上げ出来るよう私も頑張ってみようと思います。
※おしぼちょ
大分県北の郷土料理。耳たぶの硬さに練った小麦粉生地を麺棒で延ばし(押す)包丁で切ることからおしぼちょという。茹でてきな粉や砂糖をまぶし、甘味として食したり、団子汁にも入れる。
総合監修 生活工房゛とうがらし˝金丸佐佑子(平成23年9月)
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西 文正さんの茄子
収穫を楽しみにしている西 文正さん
茄子畑
収穫前の茄子
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