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[食 Vol.49] 豊後大野市犬飼町(いぬかいまち) / 高糖度かんしょ「甘太(かんた)くん」」

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豊後大野市犬飼町(いぬかいまち)

高糖度かんしょ「甘太(かんた)くん」

Vol.49
 大分県では特徴のある新たなかんしょブランドを目指し、栽培品種や生産技術などの検討を重ね、生まれたのが高糖度かんしょの「甘太(かんた)くん」です。
 平成20年から「甘太くん」の産地拡大を進め、現在では豊後大野市、臼杵市を中心に自然豊かな環境の中で生産されています。

 「甘太くん」として出荷できるのは、収穫後一定の条件下で40日以上貯蔵し糖度検査、品質チェックを行ったうえで、JA全農おおいたを経由したものに限られています。

 今回は、豊後大野市で「甘太くん」の生産拡大に取り組んでいるぶんご大野甘藷部会部会長の木津一秀(きづかずひで)さんを訪ねました。

 取材に伺った11月中旬には、既に収穫を終え、庭先の貯蔵庫に収穫時ごとにきれいに区分されたコンテナがぎっしりと積まれ、12月からの出荷に備えていました。
 貯蔵庫の中は、芋にストレスを与えないよう常に13〜14度に保たれており、ここに収穫した芋を置いておくとでんぷんが糖分に変わって甘みが増していくそうです。

 木津部会長のお話では「甘太くんの特徴は、甘みとしっとりとした食感、そして冷めても美味しくデザート感覚で食べられる。これが流通関係者や消費者から高い評価をいただいているが、まだまだ生産量が追いついていない状況にある。」そうです。

 ぶんご大野甘藷部会では毎年「甘太くん」の産地拡大に取り組んでおり、作付けを始めた平成20年産の栽培面積は2.0haでしたが、平成23年産では17.8ha(出荷量約530t)まで拡大しています。今後もさらに生産量を増やし「甘太くん」のブランド化を図りたいと意欲を燃やしています。

 木津部会長は「消費者は、できあいのイモでは認知してくれない。「甘太くん」は、栽培に最も適した圃場選びから育苗、施肥、植付、害虫防除、収穫、貯蔵、糖度検査まで美味しく食べられるよう徹底的に生産管理を行った「作り上げたイモ」だから消費者に評価されていると思う。今後も愛情を込めて消費者に喜ばれる最高の「甘太くん」づくりに精進したい。」と熱く語ってくれました。

 ■JA全農おおいた
  〒870-0635 大分市古国府1220番地
  TEL:097-544-4729 FAX:097-545-0487


〈伝承料理研究家 金丸佐佑子さんのお話〉

 大分県には「さつま芋」スイーツが沢山あります。全国版の焼芋、蒸し芋、芋羊羹等から大分県独特の石垣もち、しんちょきもち、そらきたもち、ほうかぶり、はちまき、かんころもち等々。小藩分立だった大分県では作り方も微妙に異なり、ネーミングもユニークです。

 穀倉地帯に育った私にとって「さつま芋」は、米や麦、小豆より格下、救荒食品のイメージがありました。まさにたかが「さつま芋」。ところが、そのたかががされど「さつま芋」に変わったのは老舗の芋羊羹を食べた時でした。

 二十年位前になるでしょうか、芋羊羹は私の十八番料理でしたから、その違いに気付いたのです。私風の芋羊羹は裏ごしした「さつま芋」を砂糖と寒天で練り上げる。小豆の代わりに「さつま芋」を使っているということです。
 老舗の芋羊羹は芋の粘りで固めていて寒天が主体ではない。砂糖で甘味をつけようとするとゆるくなりますから当然、寒天量が多くなります。私風の芋羊羹は芋の甘さに合わせて砂糖量が決まり、そして寒天量が決まる。いもの甘さが老舗風になるか私風になるかのポイントだったのです。勿論、「さつま芋」の甘さに無頓着だったわけではありませんが、気付くまでの私にとって「さつま芋」はたかが「さつま芋」、私の技術でどうでもなると軽く考えていました。大きな間違いでした。
 その後甘さを求めていろいろと芋を試しましたが手に入らなかったりで、長い間、解決出来ずにいました。

 そして、いよいよ「さつま芋、甘太くん」の登場です。その結果、私風の芋羊羹が老舗風に変貌しつつあります。砂糖の量も寒天の量も減りました。その分練り上げる時間が少なくなりましたので、日持ちしにくくなりましたが「さつま芋」本来の味がします。

 老舗風がよいという人も私風がよいという人もいます。でもどちらでもご注文にあわせてといえる。そして長年気になっていた芋の甘さが解決出来たことは嬉しいことです。「甘太くん」本当にありがとう。

※注 
石垣もち ・・・ 「さつま芋」をさいの目に切り、小麦
       粉と一緒にこねて蒸す
ほうかぶり ・・・「さつま芋」の輪切りを小麦粉の生地
       で包んで蒸す
はちまき ・・・ 「さつま芋」の輪切りを小麦粉の生地
       で鉢巻きにして蒸す
しんちょきもち、そらきたもち・・・ 小麦粉の生地に蒸
       し芋を混ぜ「さつま芋」あんを包む
かんころもち・・・ 生の「さつま芋」を乾燥させて粉に
       ひき小麦粉と混ぜて使用

総合監修 生活工房゛とうがらし˝金丸佐佑子(平成23年11月)

甘太くん

出荷を楽しみにしている木津部会長

収穫前の芋畑

貯蔵庫

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