今回は、宇佐市院内町岡地区で収穫される「花柚子」をご紹介します。
宇佐市院内町岡地区は、近くに九州唯一のオオサンショウウオ(国の特別天然記念物)の生息地があり、周辺を山々に囲まれた標高350メートルの自然豊かな地域です。
柚子は、5月中旬から5月下旬にかけて白い花が咲き、柚子園一帯がほのかな柚子の香りに包まれます。
特に、今回ご紹介する花柚子は、花の香りを楽しむのが一般的で、料理の付け合わせとして用いることで、他の食材の良さをひきたてます。
取材にお伺いした柚子生産者の佐藤敏昭(さとう としあき)さんは、約60アール程の柚子農園で40年生の柚子を 450本程栽培しています。
佐藤さんのお話では、「岡地区の柚子団地は院内町にある4箇所の柚子団地で一番見晴らしが良いんですよ。今年の柚子は豊作で、普段は料理などにはあまり使わない「花柚子」の木にもしっかり実がついています。」とのこと。また、「これまで九州の柚子生産農家を色々と見てまわりましたが、院内の栽培柚子は他産地と比べても見劣りせず、自信を持って皆さんに提供できますよ。」と仰っていました。
佐藤さんは「宇佐のマチュピチュ」と呼ばれる院内町西椎屋地区のご出身とのことで、約40年程のサラリーマン生活の殆どを東京で過ごされ、定年退職後、平成21年に奥様の了子(りょうこ)さんのご実家のある現在地で義父他界後20年来放置されていた柚子の栽培を始めたそうです。
当初は、「定年退職後はオオサンショウウオの生息の手助けでもしよう」と考え、故郷へ戻ってきたそうですが、地域の荒廃した田畑や山林を見て、「何か地域の皆さんの生きがいになる物はないか」と考え、柚子の栽培を始めたのがきっかけとなったとのことです。
また、現在では、佐藤さん宅の柚子園は宇佐市が実施している「柚子年間オーナー制度」の受け入れ農園となっており、現在7名の方とオーナー契約を結んでいるそうです。佐藤さんは、「オーナーが安全な柚子を収穫できるよう頑張らないと。」と目を輝かせて仰いました。
佐藤さんは「現在、無農薬柚子を栽培することが中心となっていますが、今後は如何に付加価値をつけていくかが課題となるでしょう。柚子の生産、加工、販売をシステム化して若い人達も参入しやすい産業になればとても良いですね。近い将来、地域の皆さんが労働の対価としていくばくかのお金を得ることができる柚子作りを広めていきたいですね。」と力強くお話いただきました。
大分へお越しの際は是非、宇佐市へお立ち寄りいただき、佐藤さんがこだわりを持って栽培した柚子園に足を運んで見てはいかがでしょうか。
■宇佐市院内町大字岡216
TEL・FAX:0978-42-6683
〈伝承料理研究家 金丸佐佑子さんのお話〉
久しぶりに感動する食材の言葉に出会いました。
「花待ち柚子」花柚子の通称です。
私は子供の頃から机やテーブル、玄関先に野菜や木の実、果物を飾るのが好きでした。風変わりな子供と思われていたようです。花好きの母に刺激されて花ならぬ食べられる物へと行ったのでしょう。ヨーロッパへ行った時、ニンニクがリースや壁飾り、机上に飾られているのを見て、我が意を得たりと自信を持ちました。
我が家の果樹園(?)にある栗、柿、柘榴(ざくろ)、金柑(きんかん)、枇杷(びわ)、刀豆(なたまめ)等々。そして王者は柚子です。九月〜十月は本柚子、十月〜一月にかけては鬼柚子(獅子頭)、一月〜二月は花柚子(小鬼柚子)と勝手に区分し、命名して料理に用いたり飾ったりして楽しんでいます。青い柚子も黄色の柚子の色も香りも王者の風格充分。絵になります。
我が家のお正月の床飾りは、漆のお盆に獅子頭と庭先にある万両、千両、くちなしの実を盛り合わせ祝賀です。特別に地域に言い伝えがあるわけではありませんが、獅子は戦いに出て千両、万両を持ち帰るという商売家の遊び心からだと思います。鬼儺い(おにやらい:節分)には枡に盛った大豆と角らしきものがある小鬼柚子を飾ります。
今まで皮も酢も今一つの小鬼柚子はこの位の利用しかしていませんでした。でも今回「花を待つ柚子」なんだと聞いて感動。小ぶりの花柚子の花はそれが役割、吸口だったのですね。なんだか急に小鬼柚子がいとおしくなりました。
何本もいらない、庭先に一本あればいいのです。海風の強い我が家にはありませんが、近くに全国に誇れる院内柚子がありますから大丈夫。余談になりますが、我が家の床柱は柚子の木なのです。とても珍しいとか。すごいでしょう。やっぱり我が家が柚子好きなのもこの辺に原因があるのかも。
総合監修
生活工房゛とうがらし˝金丸佐佑子(平成26年6月)
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花柚子
花柚子
院内町岡地区の柚子団地
ほのかな柚子の香りが漂います
佐藤さんご夫妻
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