大分SHOKUトップページへ

[食 Vol.70] 日田市大山町 / 実山椒(みざんしょう)」

大分SHOKUトップページへ

大分|食|大分の食物

日田市大山町

実山椒(みざんしょう)

Vol.70
 鮮やかな緑色の実が旬を迎えている山椒の木が川辺に繁り、梅雨らしい季節感が辺り一面に広がっています。
 今回は、大分県の西部、日田市大山町で栽培されている「実山椒」を紹介します。

 山椒の栽培はいわゆる粗放栽培で行い、大山町では約  300世帯が栽培しています。粗放栽培のため、あまり手が掛からないのかと思っていましたが、実は土作りにこだわっているとのこと。
 実山椒に限らず、殆どの農産物について、250種類の微生物群を添加した酵素が含まれる堆肥を使用しており、「大山オーガニック農法」として大分大山町農協が中心となって取り組んでいます。
 
 取材にお伺いした、大分大山町農協の中嶋英明(なかしま ひであき)課長さん、生産者の中嶋繁(なかしま しげる)さんは「山椒の栽培は狭い耕作面積を有効活用できるのがメリット。市場は福岡市、北九州市が中心であり、生産量が増えれば関東方面にも出荷したい。」とお話されました。
 
 坐来大分では6月中旬からのメニュー(豊山コース)の温鉢「杵築鱧 茄子煎り出し〜大山梅、山椒〜」としてご用意しています。大山町特有のこだわりの土作りによって栽培された「小粒でぴりりと辛い」実山椒を是非、ご堪能ください。


■大分大山町農業協同組合 営農課長
  中嶋 英明氏
日田市大山町西大山3487
  TEL:0973-52-3151

■生産者
  中嶋 繁氏
  日田市大山町西大山7968
  TEL:0973-52-2087


〈伝承料理研究家 金丸 佐佑子さんのお話〉 

 先日、青実山椒が届きました。母が健在の時には我が家にも山椒の木があり、実山椒も沢山採れていたのですが、私の代になって立ち枯れ。実生の木も次々と消えてしまいました。どうも私との相性がよくないようです。それ以降は、知人、教え子、親戚の皆さんが私の喜ぶ顔が見たいといって送ってくださいます。棘の中から実山椒を採るのは大変な作業です。本当にありがたいこと。感謝です。

 何故、私が青実山椒が大好きか説明せねばなりません。我が家には今年で109年を迎える糠床があります。祖母から娘、嫁へと伝承され、現在の私は三代目です。先般、法事の席で糠床の話が出ました。集まった従姉妹達の中で祖母の糠床を守っていたのは私達三姉妹だけでした。祖母や母が守ってきた糠床の労苦を簡単に捨て去るのは申し訳ないと思うのです。年月を重ねるごとに味も深味が出てきます。たかが糠床、されど糠床。やっぱり大切に守っていきたいと思っています。

 その名脇役が青実山椒で絶対に欠かすことができません。全国的に糠床漬けはあります。最近は市販品の糠床もあり、中にはアミノ酸液等も加えられ大変美味しい漬物が出来るとのこと。けれども我が家では糠床の最大の自慢は漬物作りではなく、この糠床で鰯や鯖等の青魚を炊くことです。北九州市小倉を中心に豊前海沿岸では糠床炊きの文化があり、100年を超す糠床を持つお宅も少なくありません。糠床の古さによって味が決まるのです。もちろん、古さだけでなく手入れも大切。そしてその家の工夫も重要。妹が五年間アメリカに滞在している間、我が家が床を預かりましたが、自分の味に返すのに二年かかった由。私も長期不在の時は預け先に苦労します。もうぼちぼち娘や嫁に完全委譲する時期が来ているようです。祖母や母の時代の青実山椒の保存は塩漬けにして一年中使いましたが、現在の私は冷凍し、必要な時に解凍。便利な時代になりました。止まれ。糠床の話になったら、きりがありません。このお話しはまたの機会にでもすることにして。

 次に青実山椒の利用です。佃煮を作ります。更にそれにちりめんを加えて「ちりめん山椒」。更に炊きたての白ごはんに「ちりめん山椒」を散らして「くらまめし」。旬の食べ物ってどうしてこんなに美味しいのでしょう。知人、親戚にそれをお福分け(お裾分け)。お福分けでいただいた青実山椒が次々とお福分けを呼び、皆さんの喜ぶ顔へとつながります。本当に嬉しいことです。

 「青実山椒は沢山の方から届くようですが木の芽はどう調達されているのですか」と尋ねられます。どうぞご安心ください。根っから食い意地のはっている私は、ご近所、散歩道のお宅にはどんな果実が、食べられる葉っぱやその他いろいろがあることを頭の中にちゃんとインプットしているのです。山椒の葉(木の芽)はもっぱら近くの天満宮様のものをいただいています。なんだか匂いも高く、ありがたく思えるのも不思議です。これまた感謝です。

総合監修
 生活工房゛とうがらし˝金丸佐佑子(平成27年6月)

川沿いに広がる山椒の木

山椒の木(拡大)

実山椒

生産者 中嶋繁さん(左側)、大分大山町農協 中嶋英明営農課長

豊山コースの温鉢「杵築鱧 茄子煎り出し〜大山梅、山椒〜」
(※中央の柴漬けの中にある緑色のつぶが実山椒です。)

上へ戻る
食バックナンバーへ