大きめの粒を口に頬張ると、噛みごたえのある果肉からさわやかな甘味とほのかな酸味が広がります。今回は、臼杵市野津町で栽培されているイチゴ、その名も「愛情いちご」をご紹介します。
取材に伺った「かめやま農園」の矢田(やだ)しのぶさんによると、美味しさの秘密は土作りにあるそうです。肥料はもみ殻や米ぬか、落ち葉などをブレンドした自家製の有機堆肥で、化学肥料などは一切使わないとのこと。まさに安心、安全なイチゴなのです。
もう一つの特徴は、大きな粒にするために1株に5粒程度しかつけず、他は全て摘果してしまうというこだわりの作り方で一層甘味が増すそうです。同農園の作業場では、代表の亀山功(かめやまいさお)さんが手作業で大きな粒を次々にパックに詰めていきます。
ジュニア野菜ソムリエの資格も持つ矢田さんのお話では、県内はもちろん、東京のシェフの方々にも評判が良く、レストランなどでも良く使われているとのこと。今後の販路拡大が期待されます。また、臼杵市の地域ブランド「ほんまもん農産物」の金色認証も受けているそうです。
「愛情いちご」はまさに生産者の愛情をかけられて、一粒一粒丁寧に育てられたイチゴなのです。坐来大分では、この美味しい「愛情いちご」をメニューの中で皆さまにご紹介しております。是非、ご堪能ください。
■かめやま農園
代表 亀山 功氏
〒875-0211
大分県臼杵市野津町大字都原3131-1
TEL.090-8419-5500(※矢田さん携帯)
〈伝承料理研究家 金丸 佐佑子さんのお話〉
かなり前のことですが、テレビのアナウンサーの一言に思わず腹立たしく思ったことがありました。「いよいよ苺の旬です。」えー。苺の旬は十二月ですか。確かに十二月から一月にかけて、クリスマスやお正月とビッグ行事が続きますから、消費量が増し、生産量も増加するでしょう。それは旬ではなく単に消費量、生産量が増えることであって、出荷の最盛期と言うべきだと思います。
私のカレンダーでは昔から五月十日が野苺摘みの日。最近は野苺の姿も消え、露地栽培を見かけることもほとんどありません。四季に変わりはないはずなのにです。栽培法や品種改良の進歩によるのでしょうが、生産農家の方に伺った折、厳寒の時期はゆっくりと熟すため甘みが行きわたり最も食味が増すと言われました。ぼちぼち私のカレンダーも野苺は五月十日だとか苺は春が旬だとかを書きかえねばならない時代になったのかもしれません。
苦言を一つ。輸入した油を燃やしてまで、地球に負荷をかけてまでして苺を早く食べねばならないでしょうか。食材は「走り」「旬」「名残」「時無し」があり、「走り」は料理屋さん、「旬」「名残」は一般庶民向き、「時無し」はその地域や家庭の知恵や工夫のしどころと母に教えられました。苺だけでなく、最近の野菜、トマトや胡瓜、茄子等々は一年中店頭にならんでいます。
昔のことですが珍しく我が家に「走り」の野菜や果物が届くと、まずは年長者へ。初物(はつもの)を食べると長生きをするという言い伝えがあるからです。その前に仏壇に供えます。そのおさがりをこどもの私どもはワクワクして待ちました。このワクワク感は現代のこども達には無縁です。更に最近、驚かされたことがありました。小学生の孫と苺を買いに出掛けた時のことでした。孫曰く「『さがほのか』か『あまおう』がいいよ。」と。苺の品種まで知っているのです。消費者の選択は多岐にわたり、更に生産農家の名前までネットで知ることも出来る時代になりました。これらの現象はいいことなのか昭和前期生まれの私には分かりませんが。
苦言から始まった苺の文章です。姿形が可愛い、色がきれい、甘くて美味しい、なんともいえない甘い匂い等は私をワクワクさせてくれます。苺のある食卓はとても楽しいと思いませんか。苺は艹(くさかんむり)に母。言い得て妙。苺に苦言は似合いませんね。
総合監修
生活工房とうがらし 金丸 佐佑子(平成28年2月)
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大粒の「愛情いちご」
土耕栽培で育てています。
丁寧にパック詰めをします。
出荷準備完了です。
矢田しのぶさん(左側)、亀山功さん(父娘で頑張っています。)
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