風薫る5月、くじゅう一帯の草原は芽吹き鮮やかな緑色に変わります。初夏の日差しは既にまぶしく、歩いていると少し汗ばんできますが、時おり乾いた高原の風がすうっと背中を吹き抜けてゆき、その涼感は何とも爽快です。
5月も下旬になると、くじゅうに程近い、玖珠町の標高1,140mの万年山(ハネヤマ)では、ミヤマキリシマの群生が花をつけます。萌える草木の緑、咲き誇るピンク色のミヤマキリシマ。本格的な登山シーズンの到来です。
草原の中、緩やかに続く農道からは眺望が開け、正面にはメサ(卓上台地)と呼ばれる世界でも珍しい形の万年山、振り返れば、噴煙を上げるくじゅう連山、由布岳などの名山がゆったりと構え、つい足を止め見入ってしまいます。
登山口から散策すること約20分、左手にミヤマキリシマの群生が見えてきます。まさに山上のお花畑。さほど脚力は必要なく、ハイキング感覚で行けるのがうれしいところです。
取材時、以前よく登山をしていたらしいご高齢の女性が、「今年もまたミヤマキリシマを見ることができて本当に良かったわ。」とうれしそうに一言。昔の若い頃に想いを馳せていたのでしょうか。とても印象に残る言葉でした。
今年の万年山の山開きは5月27日。6月上旬までミヤマキリシマは咲き続け、その後、山が水をたたえる長い梅雨に入ります。
(平成19年5月発行)
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草原の中を走る路
玖珠町の象徴、万年山。山の形状「メサ」とは、スペイン語で「テーブル」の意
満開も近いミヤマキリシマの群生
玖珠富士と呼ばれる秀麗な涌田山(わいたさん。1,499m)もすぐそこです。
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