小鹿田焼は、大分県日田市の中心部から車で30分ほどの山中の集落で焼かれています。この『職』の第1回目でも紹介しましたので、ご存知の皆さんもいらっしゃることでしょう。
江戸時代中期(1705年)の開窯以来、300年以上にわたって当時の技法を受け継ぎ、窯を守ってきました。一子相伝の技術が国の重要無形文化財保持団体に指定され、また、唐臼が陶土を突く音が平成8年に「残したい日本の音風景百選」に選ばれています。
今年4月に窯元10軒からなる小鹿田焼同業組合の組合長に就任した坂本義孝さんを訪ねました。
「土作りから始まるすべての作業を、最後まで昔ながらの手仕事で行っています。地元の山の土を使い、川の水力を借りて土を唐臼で粉砕し、蹴ロクロで成形して、天日で乾燥させ、地元の製材所で出た木材くずを燃料として登り窯で焼き上げます。釉薬も長石や木灰、わらの灰から手仕事で作ります。土作りは女性、ロクロを回すのは男性など、昔ながらの家内労働で行っています。」
すべて人(家族)の労力と自然の力を使い、多くの時間と丁寧な手作業によって作られるからこそ、素朴で優しく、温かみのある器が生み出されるということを感じます。
「10軒の窯元は世襲制で原則長男のみが継ぐので、窯元が増えることはありません。近くの山にある土採り場の陶土の量も10軒なら今後も長く持ちますし、山の谷間にあるので唐臼に使う川の水量も限られているのです。」
機械化、効率化、大量生産といった現代のモノ作りとは一線を画し、環境に配慮し、自然との共生を大切にする考え方が印象に残りました。
唐臼、登り窯など昔ながらの光景が色濃く残る『小鹿田焼の里』の風景は、今年3月国の重要文化的景観にも選定されました。
また、『小鹿田焼の里』では、5月3日から5日までの3日間、『唐臼祭(からうすまつり)』が開催され、蹴ロクロ体験やスタンプラリーが行われます。
ぜひ、皆様も大分へお越しの際は、『小鹿田焼の里』をお訪ねください。
(小鹿田焼のお求めは)
坐来大分
TEL03−3563−0322
日田玖珠地域産業振興センタ−
TEL0973−22−3115
※ページ中の組合名、役員名は取材時点のものです。
「小鹿田焼同業組合」は現在、「小鹿田焼協同組合」となっています。
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集落の真ん中にある共同の登り窯
お話を伺った坂本義孝組合長
水力を活用した唐臼
ロクロ成形後の天日干し
素朴で温かみのある商品
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