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[食 Vol.38] 臼杵市 / 〜郷土料理 黄飯(おうはん)〜」

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臼杵市

〜郷土料理 黄飯(おうはん)〜

Vol.38
 大分県の東南部に位置する臼杵市は、東が豊後水道に面する温暖多雨な自然環境にあり、平安時代後期から室町時代初期に彫られたと考えられる国宝「臼杵磨崖仏」をはじめ、戦国時代、九州6ヵ国を治めたキリシタン大名・大友宗麟の居城があった「臼杵城跡」、武家屋敷や寺院が立ち並ぶ「二王座」、旧藩主の里帰り用屋敷「稲葉家下屋敷」など昔の佇まいを色濃く残しています。

 また、日本の転機のひとつに、オランダ船の航海長ウイリアム・アダムス(三浦按針)と水先案内人ヤン・ヨーステン(耶楊子)が大砲や造船など西洋の新技術を持って徳川家康の外交顧問として活躍した「リーフデ号事件」がありますが、慶長5年(1600年)、臼杵市佐志生にリーフデ号が漂着したことが始まりです。

 今回は、今昔が混在するロマンある臼杵の郷土料理「黄飯(おうはん)」について、臼杵市食生活改善推進協議会の安野裕子(やすのひろこ)会長さんにお聞きしました。

 乾燥したクチナシの実を砕き水につけると黄色く染まりますが、その水で炊くと、ご飯が黄色くなることから黄飯と呼ばれています。11月から12月にかけて収穫されるクチナシの実は、栗キントンやお漬物の着色材にも使われ、春に咲く白い花はジャスミン系の香を放ち、家庭の切り花にも使われています。

 黄飯は、かやくと呼ばれるケンチン汁のような汁と一対ですが、いつの頃からか家庭料理では、かやくの方が「おうはん」と呼ばれ、食卓で親しまれていました。黄飯自体が廃れていったことから、協議会ではPRに努め、給食でのメニュー化やNHK「風のハルカ」での放映などもあり、冬の郷土料理として見直されてきています。

 黄飯の由来は、江戸時代の稲葉藩では財政が困窮したことから質素倹約が奨励され、慶事の際に出す赤飯に代わる料理として生まれたと言われ、稲葉氏分家の当主が有馬温泉を訪れた際、大阪の蔵屋敷で家臣に労をねぎらい黄飯を振る舞ったという記録が残されています。また、一説では、宗麟時代の臼杵は商業都市として、ポルトガル商人等との南蛮貿易が盛んに行われたことから、スペインのパエリアの影響を受けたとも言われています。

 地域の食育を推進する安野会長さんとしては、「黄飯・かやくのほかにも、キラスマメシや茶台すし等多くの郷土料理やおやつがあるので、是非、若いお母さん方に知っていただき、受け継いでもらえるように頑張りたい。」と語ってくれました。

 坐来大分では、臼杵の長い歴史や伝統から生まれ受け継がれてきた郷土料理「黄飯」とともに、関あじ・関さば漁も行われる豊後水道で獲れた臼杵のフグをご提供していますので、是非、ご賞味ください。

<伝承料理研究家 金丸佐佑子さんのお話>

 文化勲章作家、野上弥生子さんは臼杵市の出身です。99才で亡くなるまで書き続け、多くの作品を残しました。その作風や生き方は多くの人々を魅了して止みません。私もその中の一人ですが、

 その彼女の著作の中に、?黄飯?が度々登場します。クチナシで染められた?黄飯?。対として出される?かやく?。?かやく?は冬のこの季節に手近にあるごぼう、人参、大根、椎茸、豆腐、大衆魚のえそを炒め煮したケンチン汁に似た料理です。実に質素な料理ですが美味しい。この料理を産んだ風土や精神に思いをはせると更に味が増します。普段は質素を旨としていますが、学問や行事等、必要とするときは惜しまない臼杵人の心意気が感じられる料理だと私は思っています。

 ?白いご飯?と?かやく?の組み合わせだったら極く普通の質素な日常食ですが、黄金色の?黄飯?と組み合わせることによって一変、非日常食となるのです。野上さんは成城のお宅や軽井沢の別荘でどんな方に振る舞い、楽しんだのでしょう。

 東京ではえそが手に入らないので豚肉で代用したと日記に記されています。私もえそが手に入らない時は鶏肉の挽肉を代用していましたが、野上さんの作品を読んで以来、豚肉も時に代用。それぞれ三種三様の味が楽しめます。

 県外から見えた方に、この?黄飯??かやく?をお出しすると殆どの方が驚きます。
「皆さん、黄金は沢山お持ちでしょうが、お腹の中に入れたことはないでしょう。今日は沢山、お腹の中に貯めこんで下さい。」の一言で食卓は美味しさ以上の賑わいとなります。食べることは賑わいこそが一番と思うのです。?黄飯??かやく?のスゴサはそこにあります。

 ちなみに、大分県には他にも染めのご飯があります。染めご飯とは、赤米、黒米、紫米等米そのものの色ではなく、白いご飯を染めたものです。染めご飯といういいまわしは、私が勝手に命名したものですが、
 赤飯、黄飯、紫飯この料理についてはまたの機会にでも。

総合監修
 生活工房゛とうがらし˝金丸佐佑子(平成21年12月)

黄飯

かやく

くちなしの実

国宝「臼杵石仏」

うすき町並み(仁王坐)

安野会長さん

郷土料理 キラスマメシ

うすき竹宵
臼杵の情緒漂う町並みに約2万本の竹明かりが灯る。
※毎年、11月の第1土・日曜日に開催

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