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[食 Vol.77] 豊後高田市・杵築市 / 豊後・米仕上牛」

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豊後高田市・杵築市

豊後・米仕上牛

Vol.77
 今回は大分県の北部(国東半島の北西)に位置する豊後高田市と杵築市にある3戸の牧場で、安全・安心をキーワードにこだわりをもって飼育されている「豊後・米仕上牛(ぶんご・こめしあげぎゅう)」を紹介します。

 取材にお伺いした豊後高田市にある有限会社 高田牧場では、年間およそ250頭の「豊後・米仕上牛」を出荷しています。代表の仲井光則さんによると、「「豊後・米仕上牛」の特徴は、肉質がやわらかく脂肪中に多くのオレイン酸を含み、しっとりとした旨味がある。その後味の良さから肉の脂が苦手な人でも美味しく頂ける。」とのことでした。

 美味しさの秘密は、その名のとおり米仕上げにあるようです。「豊後・米仕上牛」は、出荷までの間に大分県産の飼料用米を200kg以上与えています。
 「輸入飼料は品質が安定しているけど、できれば安全・安心な国産の飼料を使いたい。地元の稲作農家さんに飼料用米を生産してもらうことで、地域の水田の維持にも役に立つ。地域に根ざしたみんなが共に助け合えることが大事。」そうした思いから、飼料用米はすべて地元産のものにこだわっており、牛が消化しやすいように加工する工夫もしているそうです。

 2009年に大分県内ではじめて飼料用米の給与に試み、試行錯誤や他県への視察研修を経て、2012年に県や関係機関の協力を得て「豊後・米仕上牛」を誕生させた仲井さんの取り組みは、現在、品質の高さも認められ、生産者も同じ豊後高田市と杵築市の畜産農家の仲間3戸となり、販路も県内に本社を置く老舗のスーパーマーケットチェーンを中心に大分の新しいブランドとして広がりを見せています。 

 「野生の猪などの肉も雌の方が柔らかくて美味しい。だから、高田牧場で飼育する牛も95%以上は雌です。」
 そんな飼料用米の他にもこだわりを持って仲井さん達が丹精込めて作り上げた「豊後・米仕上牛」を、是非坐来大分でご堪能ください。

【坐来大分の豊後・米仕上牛のメニューは、期間限定ですので予めご了承願います。】

■有限会社 高田牧場
  代表 仲井 光則氏
  〒879-0613
  大分県豊後高田市小田原2559





〈伝承料理研究家 金丸 佐佑子さんのお話〉

 今回は、豊後・米仕上牛の紹介です。
 そこで、牛肉料理(すき焼き)について心温まる話をしたいと思います。

 五、六年前のことです。
 仲良しの友人四人で今風のランチをしました。美味しい料理に舌鼓を打ちながら、終戦後の貧しい食事に話が及び盛り上がったのです。その時、友人の一人が子供の頃の「すき焼き」の思い出話を語りはじめました。

 彼女の家はご両親と子供五人。家族のお祝い時、例えば誕生日等の時は必ず「すき焼き」だったそうです。当時の食糧事情からすれば、最高級のご馳走でした。お父様が必ず牛肉を買ってくること、その他の具材には定番のねぎ、白菜、こんにゃく等、農村部ですから季節の野菜は割と手に入りやすかったのですが、じゃがいもが沢山入るということが独特でした。私たちは思わず「まるで肉じゃがみたい」と大笑いしました。

 子供達は先を争って食べます。ご両親は嬉しそうにその姿を見ながら「おなか一杯になったかい。一番美味しいのは煮汁とそれをしっかり吸ったじゃがいも。栄養もたっぷりだしね。」ご両親はそういって残りのじゃがいもを食べるのが常だったそうです。

 子供はそれをずーっと信じていましたが、成長するにつれ分かってきました。何故、牛肉を父が買ってくるのか。お母様では、つい節約が優先して牛肉の量が少なくなること。じゃがいもは増量のためであること。両親の牛肉は子供達が食べていたことを。
 大笑いしながら浮かれていた私たちは途中から少ししんみりとなりました。この時代、どの家庭にも似たような思い出がありましたから。

 参加した友人の全てがその日の夕食を「すき焼き」にしました。夫婦二人の人も、孫がいる賑やかな家も、高齢の実家のお母様に土産として「すき焼き」用牛肉を買った友人も。私もその中の一人です。
 今の私達は国産牛とか和牛とか、とても簡単に求めることが出来ます。「すき焼き」なんて日常食の一つです。けれども牛肉は他の食材とは少々異なり、日常食でありながら、非日常的。
 高価だからでしょうか。いいえ違います。親の想いや家族の賑わいのある会話、ひいては飼育農家さんの想いは他の食材とは少々違うように私には思えてならないのです。前述の五人の子供さんは周囲の皆さんが羨む方々に成長されました。

「すき焼き」ってすごーいと思いませんか。
 我家も家族五人で「すき焼き」を時々囲みます。意図する想いが伝わっているかどうか。
 じゃが芋も入っていないし、息子ではなく嫁や私が牛肉を買いますし。けれども「すき焼き」を囲む食卓の思い出は孫達が親になる頃には分かってくれると期待しております。


総合監修
 生活工房とうがらし 金丸 佐佑子(平成28年11月)

豊後・米仕上牛(ぶんご・こめしあげぎゅう)

高田牧場 代表 仲井光則さん

地元で生産された飼料用米

飼料用米は消化しやすいよう加工して与えている

豊後・米仕上牛の品種は、「黒毛和種」と「ホルスタイン種」の交雑種

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