大分SHOKUトップページへ

[職 Vol.14] 日田市大山町 / ウッドアート楽」

大分SHOKUトップページへ

大分|職|職人の技

日田市大山町

ウッドアート楽

Vol.14
 今回の『職』では、大分県の西部に位置する日田市大山町で、地域特産の梅や梨、その他さまざまな木材を使って木工芸品を製作している 『ウッドアート楽』 代表 矢羽田匡裕(やはた まさひろ)さんを紹介します。

 矢羽田さんは工房を構えている日田市大山町の出身で現在39歳。大分高専(大分市)を卒業し、日田市内の企業で6年間勤務した後、木工の世界に入ったそうです。
 「26歳の時でした。会社や仕事がいやではなかったのですが、将来に対する明確な目標がなく、独立したい気持ちもありました。そんな時、大山町農協から、特産品である梅の古木を活用した『梅の木工房事業』の構想を聞いたのです。私は当時大山町青年団長を務めており、地域振興に役立つことをしたい想いがあったので、この事業は町の活性化にも繋がり、ビジネス的にも面白くチャンスだと感じました。ただ、正直言うと30歳まで頑張ってだめなら諦めようと思っていました(笑)。」

 この大山町農協の一事業として平成8年に始まった『梅の木工房事業』は、平成10年『大山町農協 梅の木工房生産組合』として発展し、矢羽田さんは組合長に就任しました。
 しかし、その後、諸事情から組合は平成12年3月末に解散しましたが、矢羽田さんは組合の生産・販売事業を継承し、個人事業として『梅の木工房』を設立、再スタートを切りました。
 そして、平成17年1月、現在の工房に新築移転したことをきっかけに屋号を『ウッドアート楽』に変更し、現在に至っています。

 矢羽田さんは、現在、素材を梅の木に限定せず、里山の雑木や国内外の木材を使用して、スプーン、フォーク、箸、器、一輪ざし、アクセサリーなど幅広い商品を製作・販売しています。特に人気商品は、名入り箸、子供用器セット、干支の置物とのことです。
 日田市や別府市、湯布院など県内の小売店への自社製品の卸売りはもとより、東京の『銀座・和光』やインテリアショップ『TIME&STYLE』、福岡『太宰府天満宮』などへの商品の提案及び依頼製作など幅広く取引しているそうです。また、各地での展示会出展に加え、一昨年9月からはホームページを立ち上げ、インターネットによる直販も開始しています。

 矢羽田さんからいろいろとお話を伺いました。
 「私の商品の特徴の1つは、この土地の素材である梅、桜、梨などを生木から加工していることです。これは、私が木工を学んだ時松辰夫先生(アトリエときデザイン研究所)から『その土地にある素材を使うことで地域性を高めることができる』と教わったからです。2つ目の特徴はロクロを使った加工技術です。例えば、ワイングラスを作っていますが、このようにグラスの縁の部分を薄く繊細に加工するには自動機械ではできません。最後の繊細な部分はやはり手仕事になるのです。」
 「私はモノづくりよりも地域の産業としての切り口からこの世界に入ったので、最初は自分の作品像を追い求めるような、作家性の部分はあまり意識せず、あくまで地域発の商品としての製作を重視していました。言うならば『作品製作』というより『商品生産』というイメージです。しかし、お客様の中で私個人に対する『作家性』や『作品としてのこだわり』というようなものを求めていらっしゃる方が少なくないということを感じるようになりました。また、そういう部分を追求することがオリジナリティーにつながり、結果的に『商品』としての魅力を上げていくんだと考えるようになりました。単純に木工がずっと好きになって『ハマッタ』という事もあるんですけどね(笑)」
「これまで様々な経緯を経て、一個人事業主として事業に取り組んできましたが、ここに来て、この仕事を始めた大きな目的であった『地域独自の産業の育成』『地域雇用の創出』というテーマと、自分の現在の事業とが徐々に重なり合って実現しつつあると実感しています。これからも特色ある魅力的な日田地域を作り上げていくため努力したいと思っています。」
 今後については、「家具も作ってみたいし、木彫看板の製作にも興味があります。」 また、「個人工房の良い部分と、大きな木工所の生産効率の良い部分とを融合したいと思っています。お客様に近いところで身近な素材に柔軟に対応できる部分と、ものづくりの工程や段取りの効率化、生産性向上の部分とを掛け合わせた、ハイブリッドな工房とでもいうべきものを目指したいです。」

 矢羽田さんの言葉からは、ものづくりに対する熱い想いと、自分の生まれ育った地域の活性化に役立ちたいという気持ちがひしひしと伝わってきました。
 今年11月に40歳という節目を迎える矢羽田さんですが「全然大人になっていません。精神的には中学生の頃と同じです(笑)。」と明るく話してくださいました。
 日田地域のみならず大分の木工芸を支える若手リーダーとして、矢羽田さんの今後一層の活躍が期待されます。

【ウッドアート楽】
  代表 矢羽田 匡裕
  大分県日田市大山町東大山474-3
  TEL/FAX : 0973-52-2032
  下記関連リンクからHPをご覧ください。

  (平成21年6月発行)

大人気の子供用器セット。

お話を伺った矢羽田匡裕さん。

工房横のショップに並ぶ商品。

梅の木の皮付き器。

かわいい干支の置物(『ウシさん2009』)。

名入り箸(好きな文字を入れてくれます)。

梅の花をモチーフにしたネックレス。

マグカップ。

上へ戻る
職バックナンバーへ