別府行きの汽車に乗っていると、山の中腹に見えてくる「 ラ ク テ ン チ 」の大きな文字。駅でバスに乗り換え坂道を上っていくと、目の前にどんどん迫ってくる山肌のケーブルカー。そして弾む心。
これは大分県に住む多くの人に共感いただける懐かしい思い出です。
ラクテンチは、昭和4年に「別府遊園」として開園した日本国内でも歴史のある遊園地です。戦時中の閉園期間をのぞき、現在も「別府ワンダーラクテンチ」として、家族連れやカップルを中心に、多くの行楽客に親しまれています。
50度の急勾配を上るケーブルカーを降りると、さまざまな遊具がところ狭しと並び、地形や土地柄を生かした特色のあるアトラクションが目を引きます。
まず、下界の海岸線からも見える「フラワー大観覧車」は、断崖にせり出すように立っています。標高を加味すれば、直径200mの観覧車に乗っているようなもの。天気の良い日には、立ち上る湯煙をはるか眼下に四国まで眺望が広がり、まるで空中散歩をしているような気分になります。
次に、普通の遊園地にはない「砂金採取」。
子供と砂金を探しつつ「なぜ砂金?」と思われた方も多いのではないでしょうか。ラクテンチの地下には金鉱脈があって明治・大正時代に採掘されていたことに由来するようです。
そして、「展望温泉」。
温泉都市別府ならではかもしれませんが、園内で「あぁ気持ちよかった」とタオルを持ち歩いている人を見かけるのは実にユニークです。
春は桜、秋は菊で美しく彩られ、散歩だけでも楽しい設計。
花見客や老夫婦が数多く訪れる理由がよく分かりました。
派手なパフォーマンスを見せる若者向けの遊園地がとかく目立つ中で、レトロな雰囲気あふれる別府ワンダーラクテンチは、大人も楽しむことのできる遊園地として、静かな人気を呼んでいます。
【アクセス】
JR別府駅より「ワンダーラクテンチ経由鉄輪行き」
亀の井バス乗車20分(約2km)
(平成19年4月発行)
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入場ゲートの奥にケーブルカーが見えています。
迫力満点の大観覧車。標高628mの猿の「高崎山」に手が届きそうです。
地下には、本物の金脈があります。
「あひる競争」レース直前の顔見せ。お客様の笑いが絶えません。
全長160mの大吊橋。上下左右を桜の花で囲まれます。
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